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lostage Interview − Album Side Part 2 −

アルバムの内容についてもう少し詳しく教えてください。収録曲に関しては「人間ロボット」など『デモカセット』に入っている曲と、『DEMO CD』の曲、「TELEVISION CITY」「○か×か」「CHANNEL 11」「INSIDE/OUTSIDE」などの比較的最近に出来た曲と、様々な時代の曲が収録されています。収録曲の選択や曲順はどのようにして決めたのですか?

清水:曲順とかはアルバム全体を通しての聴き易さとかですね。

五味兄:昔の曲をどこに入れるかとか、最初と最後を何にするかが決まれば後の流れはスムーズに決まりますね。主要なところが決まるまでは話はしてましたね。

レコーディング自体はアルバムに収録の12曲以上録音したのですか?

五味兄:いや、12曲だけですね。事前にプリプロというラフ・レコーディングみたいなのをやって、収録曲は事前に決めておきました。レコーディングでは録るだけだったので12曲しか録音してないですね。昔の音源をどこに入れるかは色々みんなと話はしてました。

清水:「クリスタルレイク」(*4)とかあったじゃないですか。あの曲とかも作ってたんですけど、置いたときにアルバム全体を通すとちょっと萎えるよなって。イメージと合わないなっとなって。

五味兄:その内にまたやるかもしれない。

同じ時期にライブで演奏されていた「タイル」と「初期化」はどうなったのですか?

五味兄:放ったらかしになってますけど、それもその内タイミングが合えば入れたい。

拓人:やってる内に「これはあんまりやな」というのが出たら、自然にライブでもやらなくなる。気付いたらなくなってたというか。

それはメンバー間、暗黙の了解で?

拓人:だいたいライブのセットリストを考えるときとかでも、「いや、でもこれはな?」って出てこないことが多い。

アルバムを聴いた印象なのですが、アナログレコードを意識して曲順を決めたのかなと思いました。全12曲がちょうど6曲ずつA面、B面で切れるような感じで。A面が「TELEVISION CITY」で始まって「BUTTERFLY」で終わる。B面が「CHANNEL 11」で始まって「街」で終わるみたいな。

清水:ああ出したいですけど、意識はしてないですね。

五味兄:でもアナログは出したいですね。あのジャケットでアナログLPやったらかっこいいよな。

清水:いいね。

五味兄:あとはお金があれば・・・・・。この前プロモーションビデオを撮ったんですけど・・・・・、結構予算的にカツカツだったんですよ。

どの曲を撮影したのですか?

五味兄:1曲目の「TELEVISION CITY」ですね。レコーディングで予算をどれくらい使ったかでプロモーションビデオにお金をどれくらい回せるかが変わってくる。レコーディングの時は作れるかどうか分からなかったんですけど、レコーディングが終わってプロモを作ろうとなったときに「じゃあ、どんなのがいい?」って話し合ったら、みんなが言ったやつは全部予算オーバーで(笑)。

皆さんでアイデアを出し合ったんですか?

五味兄:はい。それぞれイメージがあって。でもお金がかかるので、結局一番安い、スタジオで演奏してるシーンをガッツリ撮ったんです。

撮影はどうでしたか?

清水:めちゃくちゃ楽しかったです。でも、ライブよりは疲れましたね。ククク(笑)。

五味兄:怪我したりして(笑)。

どんな感じのビデオになってるのですか?

拓人:普通にきっちり演奏してるところと、ふざけまくってるところと両方撮って、それをあとで編集して混ぜてあります。

五味兄:ライブやってる感じに近い演奏にはなってますね。撮影も初めは「カメラマンこの人です」って紹介されて、その人が来て撮ってくれるんやと思ったら、僕よりも年下のその人のアシスタントが2人来て「じゃあ撮ります」って撮影が始まって(笑)。「撮ってもらってるな」って感じは全然無くて楽な感じでしたね。

清水:むっちゃ楽な感じ。

実際出来上がったものを見て本人たちはどう思いますか?

清水:もうちょっと手を加えたい感じですね。

拓人:今「こんな感じです」というのが何回か送られてきて、それをチェックしてる最中です。

五味兄:でも最初のプロモにしては、まあまあいいと思います。プロモっぽい。寒い感じではないです。

何か他におもしろいエピソードはありましたか?

清水:ライブよりしんどかった。

五味兄:機材が壊れました。プロモ撮りやのに(笑)。シールド折れたりとか。

あれって現場では本当に音を出して撮影しているのですか?

拓人:CDからデカイ音を鳴らして、アンプからも音出して、それに合わせて演りました。

五味兄:ほとんど演奏してないですね。踊りまくったりめちゃくちゃでした。

一日で撮影したのですか?

五味兄:一日ですね。5時間ぐらい。

一曲だけですか?

清水:そうですね。筋肉痛になりました。

どんなプロモビデオになってるのか早く見てみたいです。アルバムの話に戻りますね。海外でマスタリングを頼んでいると言われてましたが、それはどうなったのですか?またどういった意図があって海外でマスタリングすることになったのでしょうか?

清水:僕ら的には全然良かったんですけど、結局その海外でマスタリングした方は使わないことになって、日本でマスタリングした方を採用することになりました。

五味兄:エンジニアの原さんから「アラン・ドーチェス(*5)って人がいいんじゃないか?」ということを教えてもらって、彼に頼んで送ってもらったのが結構良かったんですけど、レーベルの人と原さんと僕らで話し合った結果、そっちじゃなくなったという感じですかね。その2つには別々の良さがあって。アランがやったやつの良さと、今回出るやつの良さと、ちょっと違う感じ。

清水:日本でマスタリングした方は大輪さんという人に頼みました。

五味兄:その今回出るやつの方がちょっと攻めてる感じになってる。アランがやったやつはどっしりしてて、ちょっと落ち着いた感じ。

清水:何か遠い感じがする。遠い存在の感じ。

五味兄:ファーストやのにえらい落ち着いていて、ファーストっぽくない感じになってた。

拓人:今の時点で出すんやったら、こっちでマスタリングしたやつの方がいいとなった。

五味兄:でもどっちもいいですけどね。

今回のレコーディングにおいて特に意識したことなどはありましたか?「こういう音を出したい」と当初思い浮かべていたことなどがあれば教えて頂きたいのですが。

清水:曲によって違いますけどね。

拓人:前のやつ(前作『P.S.I Miss you』)はリヴァーブ感がすごくあって、遠く広いところでやってる感じだったんですけど、新しいやつは出来るだけ近い音にしようというのは言ってましたね。

五味兄:今回レコーディングのときに曲単位でのイメージみたいなものがそれぞれにあって、そのイメージに近いと思われるアルバムを何枚かスタジオに持って行きました。何のアルバム持って行ったっけ?

拓人:NIRVANAの『IN UTERO』やろ・・・・。

岩城:今回?今回は『IN UTERO』じゃなくて『NEVER MIND』やな。

拓人:RADIOHEADの『OK COMPUTER』と。

岩城:No Knife?どれ持って行ったっけ?

清水:No Knifeは『Hit Man Dreams』や。

五味兄:THE JESUS & MARY CHAINの『PSYCHOCANDY』。

清水:HOT SNAKES。

五味兄:Superchunkの『indoor livinig』。FUGAZIは?

清水:FUGAZIは持って行ってない。

五味兄:それとRIDEの『Nowhere』とか、いろいろ曲のイメージに合わせて。

拓人:エンジニアの原さんが「曲単位でアルバムのイメージを持ってきてくれ」と言って、いざみんなが持ってきたら、それが90年代の音楽ばっかりやって。結局原さんが「ただ単に昔の音だけやったらおもしろくないな」みたいな感じで、少し違う感じにしようって。

その「違う感じ」というのはどの辺に出ていると思いますか?

清水:今っぽい感じかな。そのデジタルとアナログの使い分けじゃないですけど、混ぜ方とか。

五味兄:でも自分でも思うけど90年代っぽいよな。

確かに感じるところはありますね。

清水:でも、あの時のダーティーな感じじゃない。

五味兄:その時のバンドではないけど、その匂いはプンプンしよる。僕らが若い時、バンドをやって一番色んなことを考えてた時期が90年代やったと思うから。

90年代のフレーバーは確かに感じますが、個人的にはしっかりと今の音として鳴っていると思います。サウンド面ではドラムのキックの音がすごく目立ちますよね。顔面をどつかれているようなインパクトで。

清水:そうですね。あの音は原さんのおかげですね。スネアの音とかはこんな音にしてほしいとか言いましたけど。

ベースの音もデカイなと思ったのですが。

拓人:基本的に俺らはリズム隊の音がデカイですからね。

五味兄:そういう音が好きやねんな。

たぶん他の世に出ている色んなCDに比べたら明らかにめっちゃデカイと思いますよ。

五味兄:好みがその辺に出てるんとちゃうかな。

「INSIDE/OUTSIDE」のコーラスの低い声は誰の声なのですか?

五味兄:あれは僕ですね。歌は基本的に僕が全部やっています。

あの低い声は清水くんの声だと思いました(笑)。

五味兄:結構やりたいとか言うけど「あかん」って言ってます(笑)。

やってみたりしないんですか?

清水:やらしてくれないんですよ。

拓人:でもlostage初ライブのときは、しみちゃんがコーラスしてたんですよ。

そうなんですか?

拓人:幻の(笑)。「ROUTINE」でかな?でも、その結果それからはなくなったと・・・・・・。今でもそのビデオありますよ。

五味兄:友達のバンドも出てて、「あれはないで」とずっと言われ続けてましたね(笑)。

では曲作りについてお聞きします。以前のインタビューでは1曲作って仕上がるまでにかなりの時間がかかるとおっしゃってましたが、今回の新曲群も完成までにかなりの時間を必要としたのですか?

五味兄: 「とりあえずライブでやってみよう」となってから「はい完成」ってなるまでに結構時間がかかりますね。ライブでやったときが完成形ではなくて、そこから煮詰めるのに時間がかかったりします。

清水:でも以前に比べるとペースは早くなったと思う。「INSIDE/OUTSIDE」以外はけっこう早く出来ましたね。

曲の原案みたいなものはどんなときに出てくるのですか?

清水:寝る前かな。忘れたらもったいないから思い浮かんだらすぐに起きますね(笑)。あとはセッションとかで。

五味兄:一人で思い付いたものでも、みんなで一度スタジオでやってみないと分からないですからね。いざ合わしてみたら全然よくなかったりするし。逆に適当に弾いて合わせてみたらいい感じで出来るときもあるし。

一つのリフからみんなで広げていって曲になることが多いそうですが、新曲群の中で今までと違うパターンで出来た曲などありますでしょうか?

拓人:「街」くらいちゃう?

五味兄:あれはアコギが主体で。元々バンドでやろうと思って家で考えてたものをバンドでスタジオで合わせてみても全然良くならなくて。それならアコギのままのバージョンでやろうとなって、それで僕が考えたやつにノイズギターとかを重ねて。

スタジオで録る前からあのアレンジで決まっていたのですか?

五味兄:アレンジは僕と清水の2人が家で。

ライブでは?

五味兄:ライブではやったことないし、出来るかどうかわからないですね。最後のコーラス部分がちゃんと出来ないとあまりやる意味がないと思うので。

ライブでやるのはちょっと難しい?

五味兄:そうですね。

清水:ギタリストを呼ばなあかん。コーラスの人と。

五味兄:「TOKAGE」は?

清水:「TOKAGE」はリフやな。

「TOKAGE」は去年(2004年)のワンマンでやったときとは全く違った曲になっているそうですが?

五味兄:あれは元々結構気に入ってた曲やけど「どうしようか?」ってなってて。アルバムの曲順を決めてるときに何か一つシンプルでポップな曲があった方がいいなと思って。以前のアレンジのまま使うよりも、アルバムに入れるのに相応しいアレンジに変えて収録しようと思って作り直しました。以前のバージョンとはサビとかが全然違う。それにコード進行からリズムから全部違いますね。

清水:ワンマンのときの「TOKAGE」はサビがもろブッチャーズ(*6)の「ファウスト」と被ってたな(笑)。

五味兄:ああ、でもそれ後で聴いてやんな?被ってたからやめたわけじゃないやろ?

清水:まあそうやな。でもあのまま行ってたらただのポップソングで終わってた。

五味兄:だいたいはしみちゃんが「こんな感じで」って決めて、みんながそれに合わせてやる。全体的な作り方としては今回も同じような感じですね。

清水:でもアイデアのひらめく間隔はだんだん狭くなってきてますね。だからある時期にまとめて曲が出てきたんだと思います。

曲作りやレコーディングのときに聴いていた音楽や、音楽以外でもアルバム製作に影響を及ぼしたものがあったら教えて下さい。

清水:エンジニアの原さんがミックスをするときにかけていたサイケの音楽。あれがガチガチになっていた頭を和らげてくれましたね。サイケのオムニバスとかFreak Sceneというバンドとか流れてたんですけど。あそこらへんのバンドって空間が独特なので、それでイメージが沸きやすくなりました。それと心斎橋という街の雰囲気とか。欲しいものがすぐに手に入るという、何でも有りな雰囲気が。奈良でやるのとは環境の違いが結構大きかった。

拓人君は?

拓人:仲のいいバイト仲間がいて。その子との関係でいろいろ考えることがあって。僕より2歳上の男の子で元々SONICYOUTHが好きやってんけど今はHIP HOPが好きで。音楽の話とか色んな話をしてたのが影響していると思います。

五味兄:僕はちょうどレコーディング前ぐらいに、ブログ(blog the hedgehog 100万円のことか?)でBURNING AIRLINESが来日したときのSEIKI(*7)さんの日記を紹介してて、その日記を読んだのは気持ちの面でレコーディングするときの励みになった。あれ読んでめっちゃ感動したんで。レコーディングにはプラスになったと思う。

清水:レコーディング中に音楽に集中できたっていうのが一番大きいですね。音楽人になれたっていう錯覚ですね(笑)。

五味兄:錯覚なんや(笑)。

今年1年間ライブを観てきて、新曲は昔の曲と比べて、どこか感触が変わったなと感じるところがありました。その辺の変化について少しお聞かせください。

五味兄:単純に聴く音楽が変わってきましたね。

拓人:最近はみんなリズムが特徴的なのを好んで聴いてると思う。リズムで聴く感じが多い。

五味兄:90年代のオルタナバンドとかでも、おもしろいリズムを使ってるバンドとかはよく聴くし。趣味がそういう方に向いてると思う。今流行の80年代ポストパンクと言われているバンドでもリズムがおもしろいと聴くし。

拓人:昔はメロディの比重が大きかったけど最近は曲作りでもリズムの方に重きを置いてる。

五味兄:ギターの絡みも昔よりは不協和音が多くなった。歪んだ感じの方にベクトルが向いているような気がする。

拓人:昔は音楽理論的にキレイに重なっていることを探求してたけど、今は外れててもいいかって、音出て良かったらそれでいいと。

清水:そうやな。感覚的になりましたね。

好みとしてストレートなものから、もっとひねった感じのものに移行してきたと?

五味兄:そうですね。それにやり飽きたっていうのもあると思う。

ライブとアルバムは全く別物と考えてますか?それともアルバムはライブに近い感じにしたいと考えていますか?

清水:別物かな。

五味兄:でもアルバムを聴いてライブに来た人にも、ライブに来てアルバムを買った人にも、どっちにも納得してもらえる出来にはしたい。アルバムを買ってライブに来たけどライブで「全然出来てないやん!」ってのも嫌やし、ライブに来てアルバムを買ったけど「アルバム良くないやん」っていうのも嫌やし。どっちもクォリティを上げたいけど別物ではあるとは思う。

拓人:極端に言ったら全く別やと思う。でも全く別やけど繋がってないと嫌というのはある。

リンクしてないとダメ?

五味兄:うん。核になる同じ部分が(ライブにもアルバムにも)どっちにもあって、それとは違うところで、ライブのいいところとアルバムのいいところがまた別々にあるっていう感じ。

このアルバムで表現したかったことは当初思い浮かべていた形で表現できましたか ?それとも作っていく過程で変わっていったのでしょうか?

清水:僕としては当初思っていた以上のものが出来ましたね。

それはどういった面で?

清水:音質とかですね。一発録りにしても「あかんかな?」ってなるかと思ってたけど、それ以上のものが出来ましたね。

五味兄:いいものが出来たと思うけど「これでよし!」っていうのはない。

今回のレコーディングで「ここまで出来る」ということが分かったから更に欲が出てきたのでしょうか?

清水:欲は出ましたね。

五味兄:欲もあるし。例えば自分が昔好きやったバンドとかミュージシャンに憧れてバンドをやってるけど、楽器のスキルが上がったり歌がうまくなったりして、その人より技術的にうまくなったとしても、自分の中ではずっと越えられないままじゃないですか。だから元々作りたいもののイメージはあるけど、それが出来たとは言えない感じはある。それはこの先ずっと作り続けても完璧に納得いく感じにはならないと思う。追いかけ続けている感じがある。

その中で自分のスタイルみたいなものは見つかりましたか?

五味兄:まだ模索しているかな。

清水:でも結果的にそれが自分たちのスタイルなのかもしれないですね。

五味兄:おっ!うまくまとめたな(笑)。 追いかけ続けているのが自分たちのスタイル。

拓人:かっこいい!

五味兄:これ見出しで!ロッキンオンみたいや。

うまくまとまったところで、最後に今後のバンド運営についてどのように考えているか教えて下さい。

岩城:全然考えて無いですね(笑)。

拓人:ははははは(笑)。正解や。

岩城:明日がどうなるかすら分からんな(笑)。

拓人:今みたいに4人で集まってバンドを続けられたらいいだけで。仮に周りが変わっていったとして、自分らが楽しく出来なくなるんやったら意味が無い。

清水:あと出来るだけ奈良にいたい。東京とか疲れますしね。

もっと多くの人にlostageの音楽を知ってほしいと思う反面、今のようににジワジワと浸透していく感じがいいとも思います。アルバムが出たらバンドを取り巻く状況にも変化が出てくると思いますが?

清水:今の時点ではわからないですね。

五味兄:でも爆発的に売れるようなアルバムではないと思うので。だからそこまでの変化は無いと思うけど、前のミニアルバムのときよりは、もうちょっとリアクションがあればいいけど。

lostageの音楽って「ちょっと好き」というよりは「すごい好き」って感じの人がライブに来てたりすると思うので、今後もそういう感じでディープなファンを巻き込みつつ徐々にファンが増えていくのかなという感じはしますけどね。

拓人:それの方がええよな。

五味兄:ええか?まあファンは選べないですから、いろんな人がいていいと思います。