アルバム全体を聴いて思ったのは、聴き終わった後に作品としての深みと重みがズシリと来るアルバムで、聴き手がその音を真剣に受け止めないといけないという感じが、より一層強くなったと感じました。覚悟が無いとこういう音にはならないかなと感じたのですが? 清水:覚悟は決めて作りましたね。 五味兄:その時は「これが最後のアルバムになってもいい」というくらいには思ってたし。「今出来る一番いいところまで持って行こう」というのは作ってる時から思ってた。「最後になるかもしれんなー」みたいなこともちょっと考えてたから。それはライブでも、まぁそんなに意識してないですけど、「これで終わりになるかもしれんな」みたいなことって結構大事なことやと思うし。「今日このライブしか無い」っていうのはやっぱり大事なことやと思うし。そういうのが前よりは出てたと思うんですけどね。ラストアルバム的な。 ラストやったら困りますけどね(笑)。 五味兄:続けたいですけど、「それでもいい」と思えるものにしないとやっぱり作る意味が無いと思うし。 自分で聴いてみて、どんな感じですかね? 拓人:どうやろな。でも客観的に聴けないんですよね。バイトに行く電車の中とかで、いつもこれを初めて聴く人の気持ちになって聴いてみようと思って、1曲目の再生ボタンを押してみるんですよ。一度始めから終わりまで、初めて買った人が聴く感じで自分も聴いてみようと思って聴くんですけど・・・、始まったら全部思い出すんですよね。その曲を作ってたときの事とか、レコーディングの時の事とか。だから客観的に聴けない。でも聴いてて、やっぱいいなーという感じはします。 五味兄:でも完全に細かいところまで分かるやんか? 拓人:うん。 五味兄:歌詞とか、ギターのフレーズとか、その時どういう風に叩いてたかとか、分かるやんか?そういうのがない人が聴いたらどう思うねやろ? 拓人:って思って俺はいつも再生ボタンを押してみるねんけど。 五味兄:お前押したら、聴いたら分かるやん(笑)。 拓人:例えば電車の中でiPodを聴いてる人が、もしこれを聴いてたらどう思うやろなって。 五味兄:それはいつも俺も思うけど。それはもう無理や。 拓人:自分が好きなバンドのアルバムでも、例えば「電車の中で聴く時はこの曲がいいな」みたいなのとかあるやん? 五味兄:あー。 拓人:「そういう曲ってどれやろう」と思って聴いてみたりするねんけど、どれかすら選べへん。 ただiPodとかではあんまり聴こうと思わないですね。 五味兄:あーー。 家で(ちゃんと)聴きたいですね。 五味兄:でもやっぱり、聴く事に集中して聴いてもらう音楽を作りたいというのが大きいですね。昔からそうですけど。BGMにしてどうこうとかいう感じの曲でもないと思うし。 それは前回のインタビューでも言ってはりましたね。 五味兄:そうですね。BGMとしての音楽の良さっていうのも実際あるし、自分でもそういう風に聴く音楽もあるけど、そうじゃなくて、鳴ってる音に集中して聴いてもらう曲を作りたいっていうのはありますね。 拓人:実際にみんなが車で運転してる時に聴く音楽と、自分らが一人の時にちゃんと向かい合って聴いてる音楽って違うんですよね。例えばさっき清水がここに来るまでに車で聴いてた音楽とかもそういう感じなんですよね。(*4) なるほど。 拓人:バンドでやろうとした時に、ああいうのは絶対やろうってならないですね。 五味兄:どっちもいける音楽ってあるんかな? 拓人:それは聴く人によって変わるんちゃう? 五味兄:変わる? 拓人:例えばSHELLACをBGMにして飯とか食ってるヤツも絶対おると思うねん。 五味兄:おるか?(笑) 拓人:ずっと包丁でネギ切りまくってる人とか。 五味兄・拓人:デーデデデデデデデ、デーデデデデデデデ、デーデデデデデデデ(兄弟二人でネギを切りまくるジェスチャーをしながら)(*5) 拓人:ブレイクのところで、こう!(切ったネギを包丁でまな板の右に寄せるジェスチャーをして)、デーデデデデデデデ(再びネギを切りまくる)とか言って(笑)。 それは面白いですね!それでPVを作ってほしいですね(笑)。 拓人:あ、でもそれはある意味BGMじゃなくなってるかも。もう入り込んでる。 五味兄:それはネギを切り込むための音楽になってるんちゃう? 拓人:あ、そうか。 五味兄:BGMではない。 PVは明後日撮られるんですよね? 五味兄・拓人:ええとね、明日! どの曲ですか? 五味兄:「RED」です。 「RED」なんですか? 五味兄:やっぱ一番やりたい曲でやるっていう。 構想はどんな感じですか? 五味兄:絵コンテを見せてもらったんですけど、なんかおもしろそうですよ。怪獣と戦う、怪獣と戦うっていうか、そんな幼稚なんじゃないですけど(笑)。 拓人:バケモンが出てきて、俺らが戦う。 五味兄:イメージがね。 変身とかするんですか? 拓人:所謂、怪獣物みたいな、そういう感じじゃないらしい。 五味兄:もっとなんか、アングラな感じですね。 拓人:ダークな。 五味兄:主題がそういう感じで。なんかギターウルフとか、チャットモンチーとかのPVをやった人。 清水:URI GAGARN。 五味兄:あ、URI GAGARN?まあ、おもしろそうですよ。 見てのお楽しみということですね。 五味兄:明日撮りに行って全然違うかったら、そのとき言いますけど。 またブログで書いてくれるのをチェックしますね。 清水:そう言えば昨日って、ラジオのタイアップとかあったんですよね? 「こどもたち」がNHK-FM「ミュージック・スクエア」の6月と7月のオープニング曲になったらしいですよ。 清水:あ、オープニング曲か?そうなんや。 拓人:言ってたやん? 清水:聴きました? ちょっと今、家のラジオの調子が悪くてですね・・・・ 五味兄:でもそれを聴いて「これいいなー!」とかなる人とかいんのかな? 拓人:そりゃおるんちゃう? でもあれを聴いて、アルバムを聴いたらビックリすると思いますけどね。 五味兄:「え?この1曲だけかい!」みたいな(笑)。「どういうバンドやねん!」みたいな(笑)。 あの曲を選択したのはバンドの意志じゃないんですか? 清水:いや、あれは僕らで選びました。 五味兄:取っ付きやすさみたいなのもやっぱりね。いろんな人に聴かれる可能性があるところに出す曲は俺俺みたいな感じにするんじゃなくて。いろんな人に聞いてもらえる可能性があるのを無駄にするのは、もったいないと。 拓人:入り口が。 清水:入り口ですね。 拓人:入り口がそこにあって、あれがいいと思ってアルバムを買って、他の曲も好きになってくれたら。 それは面白い展開ですね。 拓人:もしあれが「英雄と人殺し」やったら、歌入る前に(イントロだけで)番組に入ってしまうからな(笑)。 イントロで終わってしまいますね(笑)。 五味兄:俺らの曲やということ自体認識されへん可能性があるで。ふふふ(笑)。 前回のインタビューの時に『PLAY WITH ISOLATION』で金銭的な余裕が出来たら海外ツアーをやりたいと言っていましたが? 清水:あ゛ーーーーー、出来てないんですよねーーー。 五味兄:金銭的な余裕の問題がねー。 出来なかった? 五味兄:まずクリア出来てないですね。 清水:金(キン)がねー。 五味兄:でも今回のアルバムは流通を海外でもやる方向で話は進んでて。 そうなんですか? 五味兄:どれくらいの規模になるか分からないですけど、売ってもらえるのは売ってもらえるみたいなので。それがキッカケで海外の方に拡がる可能性もあるので。後は金銭的な余裕次第ですかね。 アルバムにわざわざ英語の対訳を付けているのもそこを意識してるのかなと思ったんですが。 清水:はい、そうですね。こないだフランス人からメールが届いてびっくりしました。 五味兄:あー、あれか。 清水:いきなりメールが来たんですよ。 五味兄:「勝手に載せましたけど」って。 「勝手に載せた」とわざわざ連絡までくれるって律儀な方ですよね。 五味兄:すごく褒めてくれてたみたいで、親切なお客さんがフランス語を日本語に訳して教えてくれたんですけど。すごい褒めてくれていて有り難かったです。 いつも、基本的にほとんど絶賛じゃないですか?酷評されてるのを見たことが有りますか? 五味兄:あんまり無いですね。 拓人:でも酷評する人が俺らにメールなんか送ってこないやろうから。 五味兄:そうやな。 海外ツアー以外で具体的にやりたい事とか、考えてるこ事などはありませんか? 五味兄:俺はライブで別の楽器をやりたい。 拓人:俺もそれ思うわ。 そうなんですか? 拓人:自分の中でのバンドのイメージというのが、ギターとベース、ドラム、そういうのがあったんですけど。そうじゃない色んな楽器とかも、もっと使ってみたいし、ライブでもそういうのをやってみたい。「英雄と人殺し」でストリングスを入れてやった時に、アルバム全部をストリングスと一緒にやってみるとか、そういうコンセプト的なのもやってみたいなって思いました。 五味兄:でも基本は4人という最小限で出来ることをライブでやるのが楽しいというのがあるから、自分らで出来ることをもうちょっと増やしたいなというような気はする。面白くなるかもしれない。 個人的には映画のテーマソングとかやってほしいなと思いますけどね。 五味兄:あー。 拓人:サントラみたいな? 五味兄:そういう映画があって、それに合わせて作るみたいな。 エンドロールでlostageの曲が流れたらカッコイイやろうなって。 五味兄:何かのテーマがあって、それに合わせて作って下さいみたいなのは今までになかったですからね。もしあればそれはやってみたいですね。 拓人:もし、このインタビューを読んでいる人にそういう映像作品を作ってる人がいたりして、その音楽をlostageにやって欲しいなんてことがあれば是非! 五味兄:そこのフォントだけ2倍の大きさにしてもらって。「是非!」って。連絡先も載せてもらって。 一同笑い 拓人:俺ら以外の他の人と一緒に何かを作ったりするのはやってみたい。 五味兄:あー、映画とかいいなー。 清水:「魚はオイルの中」とか良さそう。 五味兄:でも作った曲を「この映画に使っていいですか?」じゃなくて、その為に作る方が俺は面白いと思う。 清水:あぁ、『ジョゼと虎と魚たち』みたいな? 五味兄:そうそうそう。あんなアルバム一枚分ぐらい作るのはしんどいと思うけど。「このシーンにあったやつをお願いします」みたいな。 清水:あー、やりたい。 五味兄:やりたい。面白そうやな。 拓人:時間的な期日とかも決まってて、その中でこうやって作ってみたいな。 清水:そんな話けーへんかな? 誰かオファー出してくれないですかね? 五味兄:絶対やりますけどね。その為にやって出来るかどうかはわからないですけど(笑)。 一同笑い 清水:自分らで映画作るとかな。 五味兄:それやりたいが為に?(笑) 清水:映像作品。 拓人:先に映像作って。 五味兄:結局お前一緒やんけ、自分で作ってるねんから(笑)。 一同笑い では最後の質問になります。「この先lostageがどこへ向かうのか?」という事について、ヒントなり、今の時点での考えなりを教えて頂けないでしょうか?。 五味兄:これ前回のインタビューのときもありましたよね。「これからどうするのか?」みたいな。これ、次にまたなんか作るか分からんけど、作ったらまたやってもらうから・・・ 清水:ふふふ(笑)。やってくれるんですか? いやー、逆に僕らがやってくれるのかな?といった感じですが。 メンバー一同:ふふふ(笑)。 有難いですけど(笑)。実際のところ嫌なんちゃうかなーと思って(笑)。岩城君も今日いませんしねー・・・。 五味兄:いやいやいやいや(笑)。 清水:いや、楽しいですよ! 五味兄:でも、これを続けることに意味があると思うんですよね。今までやってきたことも。 拓人:おもしろい。 五味兄:うん。どうなっていくか? 拓人:どうなりたいかやな。 そうですね。聞きたいのは「どうなりたいか?」ということですね。 拓人:前は確か「プール付きの家に住みたい」とか言ってたな。 五味兄:そんなんやったな。岩ちゃんが言ってたな。 清水:単純にビジュアル面というか、めっちゃ綺麗なフェミニンな格好をした、滝沢君がバンドやってたら、そりゃ「キャー!」ってなるじゃないですか? はい? 清水:じゃなくて、純粋に音楽だけ聴いて「いいな」って思えるような人たちを増やしていきたいですね。 五味兄:(しみじみ)いいこと言うな。 ですよね。 清水:まあ、僕が不細工やからそう言ってるだけですけどね(笑)。 一同:ぶはははははは(爆笑) 女の子のファンが増えて欲しいとかあるのですか? 清水:プッ!ふふ、別にないです(笑)。むしろ「オイオイ!」コールでもなったらいいですね。 ダイブとかもあった方がいいですか? 清水:ダイブとかあったらアガリますよね。 五味兄:でもさ、男女半々くらいでバランス良く来てくれてた方が良くない?男ばっかのバンドって、やっぱ・・・ 清水:ちゃうちゃうちゃうちゃう。 五味兄:音楽とはまた別のところで作用してる何かがあるやん? 清水:ちゃうちゃうちゃう。そういう男ばっかりがいいとかじゃないけど。 五味兄:あ、女が「オイオイ!」みたいな? 清水:(ジェスチャーで右腕を前後に振る) ああ!(同じく右腕を前後に振って)これですね(笑)。 清水:やっぱ、アイドル社会みたいなのってありますからね。 あの人達なりの規律みたいなのもありそうですしね。 清水:あと、なるべくライブのチケット代を安くして、お客さんがライブに来やすいようにしたいです。 それは僕らにとってもありがたいお話ですね。 清水:そして僕らのことを見たり聴いたりした人が、「何かやりたい!」と思ってくれたら、一番うれしいですね。そいうい人が増えればいいですね。 五味兄:今CDがどんどん売れなくなってきてるとか、ライブハウスがどんどん潰れてるとか、レコード屋がなくなってるとか、ちょっとマイナスの・・・、何て言うんですかね。まあロックバンドとか、そういう音楽とかって、排除されてるわけじゃないですけど、世の中全体的に見てあんまり大切に扱われてないというか、人によるとは思うんですけど、そういう感じってあるじゃないですか。例えばネットなんかで簡単にバーっと持ってきて、軽く聞いてる感じ。 音楽自体が生活の中で重要なものじゃなくなってきているという? 五味兄:そうですね。そうじゃなくて、もっと「大切にしよう」っていう感じ、このバンドのこの曲が俺にとってはすごい重要で、それが何かのキッカケになったりとか。今までも思ってたけど、そういう音楽、もっと「大切にしよう」って思ってもらえるものを今までよりもっとたくさんの人に聴いてもらって、そういう風に思ってもらいたいなっていう感じですかね。たぶんこれから音楽を聴く行為自体が、どんどんそういうお手軽な感じになっていくと思うんですよね。 そうかもしれないですね。 五味兄:もっと「大切にしたくなる曲」、もっと「大切にしたくなるバンド」。そういう風になりたい。 拓人:アンガス・ヤング・・・ 五味兄:アンガス・ヤングになりたい? 拓人:いや、あんなんにはなりたくない(笑)。
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