続いてアルバムの方に話を移らせてもらおうと思います。今回の作品ですが、今まで出した作品の中では個人的には断トツで一番好きですね。初めて『P.S.I miss you』と『DEMO CD』を聴いたときに、ライブを見に行って思った、ロストエイジってこういうバンドやし、今後こうなっていくんやろうなって期待した、その予感の先にある音が、今ドンピシャで来たかなっていう感じが僕の中ではあって。今までの作品もすごく良かったと思うんですよね。ただ一つ思うところがあるとすると、今まで突き抜けそうで突き抜けなかった部分もあったのが、今回はもう完全に突き抜けてしまった音が出来上がったなと感じました。ロストエイジというバンドのキャリア、まだ途中ですけど、今後の長いキャリアがある中でも、いつか振り返ってみたときに、たぶんバンドの代表作になってくる作品なのかなと個人的には思いました。
五味兄:このアルバムがですか?
はい?
五味兄:次のアルバム?今の?・・・(笑)
バンドの歴史を考えた場合、代表作って何枚かあったりするじゃないですか。それくらい良い作品やなと僕は思っているんですね。バンド自身から見た、このアルバムの位置付けや手答えはどのようなものなのでしょうか?
五味兄:手答え・・・。
拓人:確かに・・・。そう思うな、俺も。今までに無く一番。
五味兄:手答えはやっぱりあったというか、自分が一番いいと思っていることを、自分の近くに手繰り寄られたというか。今までは、何て言うかな、自分がいいと思っているものと距離をちょっと保ちながら、曲を作ったりすることに関わってきたというか。それが今、一番自分の近くにあるなという感じはします。
『掴んだ』ということですか?
五味兄:掴めたかどうかはまだ分からないですけど、今までの作品に比べて、それとの距離が一番近い作品というか。でも『掴んだ』となったらたぶんそこで終わりやと思うんで。まだこれから行けるなという可能性も残しつつ、近い気はします。
拓人:今までで一番いいなと思うのは毎回もちろんそう思っているんですけど、今までにアルバムを作ったときの感触とは、また違う「いいのが出来たな」という感じが・・・。それはうまく言葉で表現できないけど、今までに作ってきたアルバムの「よし、いいのが出来た!」ってのとはまた違う何か・・・、「やったな!」という感じが今回は特にするんですね。
五味兄:どう違うん?
拓人:分からん。それはでもやっぱり、ギターが俺だけになったというのもあったし。
五味兄:あーー。
拓人:そういうのが結構あるかもしれん。言ったらもう「自分一人で」って。
五味兄:あっ、達成感みたいな?
拓人:そうそうそう。まだリリースされてないですけど、僕らの中ではもう製作も終わって、後は発売されるのを待つだけという感じなんですけど、今回のアルバムを作るまでの時間も結構短かくて、また新しい引き出しから次に俺何か出せるかなって不安になるくらい、今回は全部自分の引き出しを出してしまったような感じもするんですよね。
出し切った感があるっていう?
拓人:いいのが出来たというのがある反面、次作るのがちょっと怖いというか。
聴いている方から見てもそれは思いますね。次たいへんやぞと。
拓人:それを超えないとアカンっていう。
ハードルがぐっと上がりましたよね。単純にギターが2本から1本になったという部分ではどうなんですか?
拓人:元々ロストエイジはメンバー4人でギターが2人いるバンドというので始めてたから、いざ3人になって曲を作っていると、どれだけもう1本のギターに甘えてたかということがよく分かった。自分の作り方、ギターのフレーズの考え方にしても、2本ある内の1本という作り方をしていたから、そのやり方さえも全然どうしていいか分からへんみたいな感じでしたね。スタジオで曲を作っていても、2人(五味君と岩城君)から、「もっとこうして」みたいなことも言われたし。それで今回のアルバムの曲を作っているときに3回ぐらい途中で泣いてましたからね。スタジオの外で。
追い込まれて?(笑)
拓人:ボロクソ言われて(笑)。
五味兄:追い込んだというか、作るんやったらやっぱり「3人になっても、4人のときより凄い」みたいにならないと意味無いなと思って。その為には音圧で勝負するとかじゃなくて、もっと別の何か、3人でしか出来ないアンサンブルを考えないとダメじゃないですか。だからそれを一番意識して欲しいなと思って「ブワーーーー」って言いましたけど。まあそれは僕がギターじゃないから言えるってこともあったから。
なるほど。
拓人:それをそう思って言ってくれてるんやなと言うのは、信頼しているから分かるんですけど。でも実際スタジオの中で、3人だけの場所で、「ワーーーー」って言われると、自分が今までギタープレイヤーとしてやってきたことが、全部否定されているような気がしてきて (笑)。それに負けて「俺は今まで何やってたんやろう?」みたいな感じになって涙が出るみたいな(笑)。
そこまで?
拓人:時間も無かったし。
そうですね。
五味兄:みんな焦っていたというのはやっぱりある。こっちも焦ってるからどんどん言うし。それでまあ「ブワーーーーー」ってなってた。今までと同じような考え方で曲を作っても、たぶん同じような曲の3人バージョンが出来るだけやから。考え方から根本的に変えてやらんと駄目やなと思っていて。そこら辺で結構「ワーーーー」ってなりましたね。
方程式を変えたということですか?
五味兄:そうですね。作り方というか組み方というか。骨組みが別のものだということで。
岩城君からするとアプローチで変わったというところはあるのですか?
岩城:いや、そんなに変わってないですよ。ただ、あまり気を遣わないで思ったことをパッと出せるようになったなという気はしますけどね。聴いてパッと。
ギターが2本あるのを考えるよりってことですよね?
岩城:そうですね。時間が短かったというのもあるけど、あまり考えないで素直に出来たなとは思いますね。
五味兄:確かに。メンバー間の意思の疎通が短時間で出来るようにはなりましたね。人数が減ったから。
それは良い面の発見ですよね。
五味兄:良い面です。
岩城:とりあえず早い。
五味兄:『誰が何をやってるか』というのが、音を出した瞬間にその時点で把握出来るというのが一番プラスな部分ですね。ギターが2人おったら最初何やってるか分からへんからな。今までだと録音したものを持って帰って聴いても何やってるか分からんから、最終的には2人がどういうことをやっているかを実際に目で見て把握しないといけなかった。結局それに時間がかかりますからね。
ロストエイジと言われたらツインギターが代名詞みたいな感じもありましたもんね。
五味兄:それも「もうええやろう」みたいな感じにはなっていたんで。
拓人:それも俺からすると凄いプレッシャーというか。「1人になったらどうするねんやろ?」みたいな。3人でやるとなると、もちろん見られるやろうし、それに対して良い部分も悪い部分もリアクションとして返ってくるっていうのは分かっていたから。出来るだけ良いリアクションが返ってきて欲しいというのはあるし・・・・、辛かったなあ(しみじみ)。
五味兄:まあ良かったんとちゃうん?「辛かったな」って(笑)。
拓人:録音し終わって結果的には良かったなとは思うし、一プレーヤーとしての経験としてもすごくプラスになったというのはありますけど、やっぱり今思うとそのときには戻りたくないですね。
そうなんですか?
拓人:それくらいしんどかったですね。
五味兄:まだや。もっと行けるわ。
一同笑い
拓人:これからまた出てくるんやろうけど。違う悩みも出てくるかも知れないし。
パッケージされたものを聴くだけの立場からすると、満点回答やと思いますけどね。
拓人:(小声で)やったぁ!
一同笑い
五味兄:毎回作品を重ねていく毎に、みんながちょっとずつ良くなっていくというか、出来ることが増えたりとかして、こういう風に出来るんやというのが除々に分かってくるから、他のパートのプレイヤーとしては「前あれが出来たのだから、次もっといけるはずや」というので、それを出して欲しいから。ギターのことは分からんけど、「もっと、ちゃうやろ!」みたいな感じで漠然とした意見をぶつけていくから、そこでたぶん「ワーーーーー」ってなるんやと思うんですけど。でも前より良い物を作らないと意味が無いから。
岩城君からはどういう注文を出したのですか?
岩城:ギターに関してですか?うーーん。
五味兄:岩ちゃんも結構よく分からへんことを言う(笑)。
岩城:そうですね(笑)。
拓人:2人ともギターという楽器のプレイヤーじゃないから、イメージというか漠然とした「もっとこんな感じちゃう?」って言うくらいでしか言わないですね。僕の中ではギター的にどうこうというのが凝り固まってるから、逆にその方がいいのかもしれないですね。
そうですね。
拓人:違う見方で言ってくれるから。
岩城:あれやな、コードの移り変わりとか、メロディとかリズム的に、ギター2本の内の1本というアプローチやから、なんかもうはっきりしてるんですよね。
拓人:乗っかっているというか。
岩城:そうそうそう。
拓人:リズム隊の上に綺麗に乗っかろうとする。クセというか。
岩城:もっと外していって良いのに、というのが・・・。
ああ。
拓人:上もの的な考え方じゃないんですよね、僕の作るギターが。
五味兄:そうやね。
岩城:歌みたいに!
五味兄:「歌や。歌え!」とはよく言われてました。
岩城:「歌みたいなギターを弾いてくれ」ってよく言って。
と言ってたんですか?
岩城:そう言って、まあテンパってましたけどね(笑)。いきなりそんなん言われてもね(笑)。
一同笑い
五味兄:「歌え」とかって!(笑)
岩城:「ギターで歌え」とか言われて(笑)。
拓人:今まで何年もそういうやり方でやってきたのに、もう残りあと何ヶ月でレコーディングですってタイミングで、「ギターで歌え」って。「どうしたらいいねん?」みたいな感じやったんですけど。
一同笑い
面白いですね(笑)
五味兄:んふふふふふ。「歌えって言われてたんです」って、ええわ(笑)。
拓人:「ギターで歌え」と言われましたね(笑)。
五味兄:ギター・ソロとか。
拓人:それは未だに課題として残ってる。このアルバムでも出来ていなかった部分というのはやっぱりあるし。
さっきの五味君の話にちょっと戻ると、作品毎に『やれることが広がっていった』という部分は確かにそうで、それは今回の作品ももちろんそうなのですが、僕が聴いた感じで言うとね、単純に『戻ってきた』という感覚があるんですよ。さっきの話じゃないですけど、初期衝動的な感じであったりとか、ザクッと刺すような感じであるとか、初期のロストエイジが持っていた感覚が、『やれること』徐々に増えていく中で、少しずつ薄れてきているんやろうなというのは、ずっと感じていたところで。まあ年も取っていく訳やし、仕方が無いのかなとも思っていたんですけど。今回予想外で一番嬉しかったのが、そこがど真ん中で帰ってきたということ。どうしてこのタイミングでそれがここに帰って来たのかというところは非常に興味があるところなのですが?
五味兄:アルバム製作に当たって、『どういうアルバムを作るか』というのをまず話し合うじゃないですか。全体のイメージや音像のことを。まず原点回帰的なアルバムという訳じゃないですけど、荒々しさであったり、ライブバンドの一番良いところをパッケージングするというのがテーマとして最初にあったよな?
拓人:そういう音源にしたいというのも話し合っていたし。
テーマですか?
五味兄:そうですね。テーマとしてまずそれがありました。
ライブバンドの醍醐味を出すという?
五味兄:今まで作ってきた作品はライブで実際に鳴っている音とは違うものになっていたと思っていたし。作り込んだりするようになって、どんどんそういう風になっていったんですよね。そうじゃなくて、普段ライブで鳴らしている音を、その音そのままじゃないですけど、そういうのに繋がっていくようなアルバムにして、ライブにも来てもらうようになったらいいなと思って。AVOCADOのディレクターの斉藤さんは元々エンジニア上がりなので、音のことも良く分かっているし、やっぱり僕らも信頼しているし。斉藤さん含めて話し合ったときにも、そういうアルバムにするというので、皆の気持ちがそっちに向かって行ったというのが、やっぱりありましたね。
中野君が脱退してから、レコーディングに入るまでに殆ど期間が無かったでしょ?2ヶ月から3ヶ月くらい?その間に一から曲を作ったのですか?
五味兄:元々4人でアルバム作るというのが決まっていたんですね。だから4人で曲作りを少し始めていて。その中の使えそうなものを3人用にアレンジしたというのもあるし。でも8割は3人で一から作った曲ですね。
拓人:1曲くらいと違う?
五味兄:1曲ぐらいですね(笑)。
拓人:後の8曲はたぶん3人で一から作ったと思う。
岩城:いや、2曲と違う?
五味兄:「断層」と?
岩城:「断層」と「夜に月」。
五味兄:「夜に月」は違うよ。
拓人:「夜に月」は違う。あれやろ?・・・
岩城:「夜に月」は4人でやっとったよ。
五味兄:やっとったっけ?あーーーー、やってたわ!「夜に月」やわ。
岩城:それを3人でアレンジしてん。それくらいと違う?
五味兄:2曲ですか。スタジオで簡易録音していたので、それを聴き直して3人でやれそうな曲を選んで、その2曲を引っ張ってきた。残りは3人で新しく作って。でも曲作りにかかる時間は結構短くなったな?3人になった方が。さっき言った「こうした方が良い」っていうのが、ダイレクトに伝わるから作業が早くなった。
岩城:骨組みがすぐ出来て、ギターのアレンジで泣いてたな。
五味兄:そう。土台がすぐ出来て、詰めにちょっと。その時間を2ヶ月とか3ヶ月の間使ったというか。
それにしてもメッチャ早いですよね。
五味兄:そう、そう。でもその時期はメッチャがんばったというか。
岩城:毎日スタジオに行ってたもんな。
五味兄:誰か1人でも行けたら、スタジオに行って曲作りしていたから。
1人で曲を作るんですか?
岩城:彼が1人でスタジオに来て・・・
五味兄:何で「彼」やねん! (笑)
一同笑い
五味兄:何でいきなり(笑)。
拓人:よそよそしい(笑)。
五味兄:岩城がスタジオ『E♭』(ロストエイジの練習スタジオ)で働いてるじゃないですか。夕方に仕事が終わってから「今日空いてる?」って電話して、空いてる部屋を借りて。
一同笑い
五味兄:「こういう曲をやりたいな」というのを1人で録ってみたりして。週に3、4回は3人でスタジオに集まれるので、その時に「こういう感じで」って説明して、それを元にみんなでやる。でも清水が辞めたときもそうやったもんな。
岩城:うん。
ああ、そうだったですね。
五味兄:メンバーが決まっていなかったから、1人でスタジオに行って、ガンガン作ってみたいな。
とblogにも書いていましたね。
五味兄:何もやっていないのが怖いというか。メンバーが決まっていなくて、音源も出ていないから不安で、とりあえず「行かな、行かな!」っていう感じでしたね、その時は。
岩城:まあ、でも楽しんでたけどな。
五味兄:え?誰が?
岩城:彼。
五味兄:俺?楽しんでないわ!別に(笑)。
一同笑い
傍から見たら楽しんでるように?(笑)
岩城:傍から見たら楽しそうに見えました。あ、楽しんでるんやなあって(笑)。
五味兄:全然楽しないわ!
岩城:録音するやつ持って。
ああ、はいはい。買ったやつですよね?
拓人:買ったばっかりのな。
ZOOMのやつでしたっけ?
岩城:ZOOMのやつですね。
五味兄:まだあるねんで、曲のストック。使ってないやつが(笑)。
岩城:まだあるんや(笑)。
怒られるかもしれないですけど、今回は収録曲が少ないのも良かったなと思って(笑)。
五味兄:ああ、僕も良いボリュームやなって、録って改めて聴いて思いました。
拓人:それも作る前に言ってたんですよね。
五味兄:あれ結構前から言ってたよな?
拓人:今までは収録曲が十何曲とかで、内容としてはちょっとヘビーというか、多すぎて重たいというのもあったから、次のは出来るだけコンパクトにやりたいみたいな。
岩城:もっと少なくても良かったな。
五味兄:いやーでも・・・・、まあそうかな?
7曲、8曲ぐらい?
岩城:うん。8曲ぐらいでいいんとちゃうんかなと思って。
五味兄:結構安めの設定というか。
そうですよね。
五味兄:値段的にも、もうちょっと少なくてもいいのかなと思いますけどね。
それもあって、あの価格設定にしているんですか?
五味兄:値段はね、先に決まってたから。何曲でも2000円で出来るみたいなんですけどね。
ああ、そうなんですか?
五味兄:レコーディングの予算を抑えたりしたんでね。歌録りなんかはEMIの事務所で歌ったので、制作費を結構安く抑えられた。カツカツやとは言ってましたけど。
岩城:DVDがな。
五味兄:DVD付の。
この値段でDVDが付くのもすごいですよね。
岩城:特典じゃなくて常に付くので。
ねえ。初回特典じゃないですもんね。
岩城:結構厳しいんですけど、がんばってもらって。
あれ、3人編成になって初披露のライブだったでしょ。僕もすごく行きたかった。他にも行きたかったけど、行けなかった人が沢山いると思いますよ。
五味兄:あのFEVERのやつ?
はい。
五味兄:丸々入っています。
そうですよね。
五味兄:でも結構間違えているんですよ(笑)。初めてのライブなので歌詞とか覚えきれてなくて。ちゃんと観たら結構間違ってた。
でもやっぱり収録曲が少ないというのは個人的にすごくうれしいことですね。今までのアルバムは収録曲が比較的多かったでしょ。ロストエイジの場合、全体的なイメージが重たいというのもあるので気軽にポイっと聴けるような音楽じゃない。もし統計を取ったとすると、結果的にCDプレーヤーで再生される回数は減る傾向にあったと思うんですよ。今回のはガツンと来るアルバムなのに、なぜかサクッと聴ける。終わった後にもう一度再生ボタンを押したくなる。本音を言うと毎回これぐらいで行ってほしいなと(笑)。
一同笑い
五味兄:一番いいボリューム感というか、それは僕も思いましたね。
実は昔っから思ってたんですよ(笑)。
一同笑い
五味兄:最初の頃ってそんなに音源を出していないので、「あの曲もこの曲もどんどん入れたい」ってなってくるんですよ。もう4枚目とかになってきて、ちょっと選ぶ余裕も出来てきたというか(笑)。
岩城:次に回す余裕が。
五味兄:今までは『あるやつ全部入れたい』みたいな感じやったから。次にいつそれを生かせられるか分からないから(笑)。
岩城:これは抜かしとこうって。次に録音するときにもう一回引っ張り出してきてやろうぐらいの。
五味兄:そういう余裕は出来てきた。
岩城:だから今、ストックあるもんな。
五味兄:うん。
まだ面白いのが沢山?
五味兄:面白いかどうかは分からんけど(笑)。でも昔はそうやったなあ・・・。録っとかなヤバイみたいな感じやったもんな。
いろんな意味で、いろんなことがうまく嵌ったみたいな。
五味兄:そうですね。
でもこれはアナログで聴いてほしいと思いましたね。
五味兄:ああ。
曲の並びもたぶんそうなんじゃないかなと。
五味兄:はいはい。
A面はどこから、どこまでなのですか?
五味兄:どこまでやったっけ?
拓人:「カナリア」がB面の頭。
ですよね。じゃないとおかしいですよね。たぶんそうあるべき並びやなと思って。アナログで聴いてもらいたいなと思いました。
五味兄:この間そのアナログ・レコードのプレスをやってたみたいなんですけど。
あれ面白かったですよね。(twitterでのプレス工程が公開されたこと)
五味兄:面白かったですよね。まだ現物を頂いていないので聴けてないんですけど、楽しみですね。自分の作品をアナログで聴いたことがないので。
でも、今になって何故アナログ盤を出そうと思ったんですか?
五味兄:なんでなんやろ。
今まで出してなかったじゃないですか?
拓人:AVOCADO斉藤さんがやりたいっていうのが一番なんと違う?
五味兄:AVOCADO斉藤さんは、エンジニアの頃から元々アナログで全部やる人で。プロトゥールス(デジタル・レコーディング)をやるのが嫌でエンジニアを辞めたんですよ。
あ、そうなんですか?
五味兄:「それはやりたくない」というのでディレクターの仕事に移ったと言っていました。アナログに拘りがある人やったんですよ。日本の『東洋プレス』でプレスするっていうのもそうで。海外でプレスした方が安く抑えられるけど、日本の昔からの伝統のやり方でやるっていう、そこでやるっていうのに拘りがあって。僕も自分の作品をアナログで聴いてみたいと思ったし、「じゃあ、やりましょう」と言って。向こうからの提案。
バンド側からの提案ではなく?
五味兄:そうですね。お金もかかるし。本当に売れないみたいなんですね。今回も500枚プレスとかで。それも「たぶん売り切れない」って言われていて、「それでもやろう」ってなったから。こっちから「お金出しますよ」って言っても中々通る話じゃない。レーベル側が結構無理しているというか。
ファンの人がどれだけアナログプレイヤーを持っているかは、また別の話だと思いますけどね。アナログの場合だと最初から最後まで通しで聴かなアカンでしょ。A面終わったら裏返してB面の最後までって。前作『GO』のときにファンサイトでアンケートを取ったじゃないですか。あのとき好きなアルバムの1位が『PLAY WITH ISOLATION』だったんですよ。あれが1位になったってことは、傾向として好きな曲を聴いてるのかなと。アルバムを通しでフルで聴くよりも、バラバラって言ったら何ですけど、好きな曲を聴く、好きな曲が入っているアルバムを聴くっていう傾向があるのかなと思って。
五味兄:ああ。
アナログ・レコードって、ある意味「最初から最後まで通しで聴いてくださいよ」っていう提示じゃないですか。
五味兄:確かに。曲で止まらないですもんね。
止まらないですね。そういうバンドとしての意図があったのかなと深読みをしたんですけど。
五味兄:それは今気付きました(笑)。
一同笑い
五味兄:僕らの世代は、まあ世代的なことじゃないかもしれないですけど、アナログに対してそこまで思い入れも無いというか。「いいな」と思いますし、音の違いも何となく解りますけど、そこまでアナログに対する拘りとかは無いんですよ。たぶん周りが思っているほどには。
「バラバラで聴いてくれてもいいよ」っていう?
五味兄:バラバラでもいいし、アナログが好きな人はアナログで聴いてもらったらいいしって。それぞれに色んな聴き方があって、それらに対応できるように僕らが用意しておくというのが大事なんじゃないかなと思います。配信とかにしても。
はい。
五味兄:アナログオンリーのリリースとか、そういうのは僕は嫌やなと思うんですね。色んなやり方があって、それを用意できる環境に今あって、それをやるっていうのが面白いなと思いました。